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Selfishly

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Pa 8 『決意 1』

 
~スローライフ~
        Pa 8 「決意 1」H17、12/15 01:30



その日の朝は慌しかった、
軍のメンバーをたたき起こし、身支度を整えさせ
食事をさせて送り出すのに、エドワードはおおわらわだった。

男が4人も部屋をウロウロすると、
さすが 広い部屋も狭く、むさくるしくもなる。
「エドワードさん、シャワーをお借りしました。」
「あぁ、次の人も早くいけよ。
 フュリーさん、食事は もう出来てるから
 食べててくれよな。」
「はい、頂きます。」

フュリーにそう声をかけると、まだ寝転がっている
ハボックとブレダに声をかける。
「こっら~!
 いい加減に起きろ! 遅刻するぞ!」
次々に ブランケットを剥がしながら
 揺さぶって起こしにかかる。
「・・・もう少し・・・」
それでも、寝ようとするハボックの耳元で、
「もうちょっとも、後ちょっともない!
  起床~!!」と大音量で、叫ぶ。

「ううう~、俺 こんな家政夫はいらない・・・。」
耳鳴りを押さえながら、やっとこさ起き上がったハボックと
自分がやられてはたまらないとばかりに、
起き出したブレダを確認すると。
「いらなくて、結構!
 ほら さっさとシャワーを浴びてくる。
 あんたら、酒臭くて仕方ないぜ。」
顔をしかめて、そう告げると
「「そうかぁ~」」と、シャツをクンクンと匂ってみる。
軍では、日常茶飯事過ぎて気にならないのかも知れない。

二人をとにかく起こすことに成功したエドワードは
次に トレーに食事を乗せて、
2階のホークアイ中佐の元に行く。
扉を控えめにノックすると、
中から『どうぞ』の返事があった。

「失礼します。」
なんとなく、緊張しながら部屋に入ると、
すっかりと身支度を整えたホークアイ中佐が立っていた。
「おはよう、エドワード君。」
「おはよう、ちゃんと眠れた?」
運んできたトレーを 備え付けのテーブルに置くと
そう、聞いてみた。
「ええ、ありがとう。
 シャワーも使わせてもらって、助かったわ。」
にっこりと、昨日の疲れもみせない中佐は、
階下の男連中とは、やはり格が違う。

「これ食事な。」
「わざわざ、ごめんなさい。
 下に食べに行ったのに・・。」
エドワードに申し訳なさそうに礼を言う。

「とんでもない!!
 あんな所で、落ち着いて食事なんかできないぜ。」
シャワーを浴びたら、トランクス1枚でウロウロしそうな
連中ばかりだ、とても 妙齢の女性が居て楽しいところではない。
エドワードの心情がわかったのか、
クスッと笑うと、
「大丈夫よ、慣れてるから。」と豪胆なところをみせた。
確かに 軍で中佐まで上がってきた女性だ、
他の一般の女性とは違うだろう。
けど、エドワードとしては いくら慣れているからと
ホークアイ中佐を、あんなむさくるしい所に
入れるのは ためらいがあった。
「でも、気持ちは嬉しいわ。
 ありがとう。」
綺麗な笑顔で微笑まれると、思わず顔が赤くなってしまうエドワードは、
まだまだ子供である。

「じゃ・じゃあ、下で待ってるな。」
「ありがとう。
 食べ終わったら 持っていくわね。」
照れて、早口に伝えると足早に出て行こうとする
エドワードに、微笑みを浮かべながら見送った。
『本当に お婿に欲しいわね。』
と、まんざら冗談でもない思いを浮かべながら。


ホークアイ中佐に、そんな風に思われているともしらずに、エドワードは、
下でウロウロとしている連中の
世話を てきぱきとこなしていく。

「んじゃぁな~! ごちそうさん。」
「ありがとうございました。
  また、越させてくださいね。」
「おう、いつでも来ていいぜ。
  メシ位は、準備しといてやるからな。」
ドタドタと出勤をしていくメンバーに声をかけて
見送りながら、何か忘れているような気がしてならない。
なんだっけ・・・、なんか1番大切な事を忘れている気が。
もやもやとした心持で、最後に悠然と出て行くホークアイ中佐を見て、
「あっ~! 中将、起こすの忘れてたー。」と、
思わず叫んでしまう。

「エドワード、それはあんまり酷いんじゃないか?」
後ろから、声をかけられ ギクッとしながら振り返る。
そこには、憮然と立っているロイの姿があった。
「あっ、お・おはよう・・・。」
しまったと思いながらも、取りあえず挨拶をする。
「おはよう、エドワード。」
苦笑を浮かべながら挨拶を返してやる。

玄関を出ようとしていた中佐もロイに気づき
「おはようございます。
 では、先に行っております。」と一礼して出て行った。
「あぁ、昼過ぎには着くようにするので。」
二人のやり取り後、閉まった扉をみて
「え、中将。
 今日は昼からなんだ?」
遅刻させずに済んだと思うとほっと気をおとした。
「あぁ、君を駅まで送りたいしね。
  それと、プライベートでは 中将ではなく
  名前で頼むよ。」
そういうと、リビングの方に引き返していくロイに付いて
エドワードも入っていく。
「もしかしたら
 俺を見送る為に 出勤を遅らせたのか?」
また、ロイの負担になっているのではと顔を曇らすエドワードを見て
「いや、もともと休みの振り替えで半休なのだよ。
 なかなか、丸1日休むという事ができなくてね。」
君が気にする事ではないと、安心するように微笑みかけてやる。

そして、部屋の惨状をみて、顔をしかめる。
「しかし、これは酷いな。
 私も用意が出来たら、片付けるのを手伝おう。」

「何言ってんだよ。
 これこそ俺の仕事だろうが、
 あんたは ゆっくりと支度でもしてこいよ。」

どこまでも甘い雇い主を部屋においやって、
昨日の惨状を残す部屋を片付けていく。
ひどく見えても、エドワードが毎日きっちりと掃除を
行き届かせているので、意外に簡単に片付いた。
次はロイの食事をと、廊下からロイに叫んで声をかける。
「ロ、ロイー、もう食事にするかー?」
慣れない名前で呼ぶのに、勇気を出して呼んでみる。

「・・・・」
しばらく待つが返事が無い。
もしかしてと思い、部屋を覗いてみると
予想どうり すやすやとベットで寝ているロイの姿があった。
静かに近寄って行き、寝ている姿を見つめる。
『 こいつ、疲れているんだろうな。』
帰るのも いつも深夜に近い時間だし、
朝は早いし、まともに休みも取れてないようだし。
時計をちらりと見て考える。
昼間でに司令部に行けば良いと言ってた事を思い出し、
時間を逆算する。

もう少し、寝かせといてやるか。
起きたらロイは怒るだろうが、エドワードは駅まで
自分ひとりで行く事にする。
その間に、簡単に食べれる日保ちのする食事を作っておく事にした。

「ロイ、ロイってば、
 もう そろそろ起きないとやばいぜー。」
気持ちの良い2度寝を楽しんでいると、
自分を呼ぶエドワードの声が聞こえてくる。
最近は 毎朝こうやって起こしてもらうのが
日課となっている。
彼が 居てくれ、起こしてくれると思うと
ついつい安心しすぎてしまうので、
なかなか、自分で起きれない。
「・・・わかった。
 おはようエドワード。」
なかなか起きない割には、ロイは目覚めると
必ず エドワードに微笑んで挨拶をする。

そんなロイをじっと見つめるエドワードに
いつもと違うのに気がついたロイは
「どうかしたのか?」と聞いてみる。

「いや・・・、
 あんたは起こされても文句言わないんだな~と思って。」
「文句?」
エドワードの言葉を不思議に思う。
「うん、今日 ハボック達をおこしたんだけど
 起こすのは あんたと同じで手間かかるんだけど、
 起こした後も、グズグズしていたから
 普通は 皆、そうだよな~と思って。」

「・・・そうだな。
 まぁ、私の場合は 君が起こしてくれるのが
 安心出来るんで、。
 感謝の気持ちが大きいからかも。」

「そっかー、それなら嬉しいけどな。俺も。」

じゃぁ、急げよと言って エドワードが部屋を出た後に
時計を見て、顔をしかめる。
「やられた・・・。」
時間は、司令部に行く時間しか残されてない。
「・・・2度寝せずに、起きとくべきだったな。」
しょうがないと、身支度を整えてリビングへ降りていく。

「よぉ、食事は もう用意出来てるからな。
 後、いくつか 作り置きの料理を入れてるから、
 温めて食べろよな。」
エドワードは、もう 自分の出立の準備を終えているようだ。

「エドワード、駅まで送ると言わなかったかい?」
「うん、気持ちは嬉しいけど
 もう子供じゃーないんだから
 自分でいけるさ。
 あんたは、過保護すぎるよ。」

ロイに言われる事がわかっていたのだろう、
苦笑しながら、そう返してくる。

「過保護にしたつもりではないんだが。
 私が見送りたかっただけなんだ。

 まぁ、寝てしまった私も悪いからな・・。
 で、どれくらい帰るつもりなんだい?」

ロイの食事を渡してやりながら、返事を返す。
「そうだな・・、荷物もまとめなくちゃいけないし、
 1週間位かな。」

「1週間・・・。
 わかった。 帰って来る時には、なるべく迎えにいくので
 また、連絡をくれるかい?」

ロイからの申し出に、エドワードが また、ちょっと驚いた顔をする。
「えっ、いいよ! 迎えなんて。」

「いや、私が 迎えに行きたいだけなんだ。
 連絡をくれるね?」
確認を取るロイに、ためらっていたが
「わかった。」と短く返事を返す。

ロイに食事を出し終わると、エドワードは出立する為に
荷物を持つ。
「じゃぁ、行ってくるな。」

「もう?」
食事の手を止めてロイが、驚いたように聞いてくる。

「うん、昼過ぎの列車に乗ることにしたから
 今からいけば、ちょうどいいんだ。」
じゃぁとばかりに出ていくエドワードの背中を見ると
思わず ロイも立ち上がって後をおう。

ロイが立ち上がって出てこようとしたのに
気づいたエドワードは、慌てて
「いいよ、いいってば。
 あんたは、食事をしてろよ。」
とロイを止めようとするが、
ロイは付いて来るのを止めようとしない。

あきらめて、玄関に向かうエドワードに
「エドワード、
 そういえば、列車の中の時間も結構あるだろう?
 何か 本でも持っていったらどうだい?」

ロイの提案に、ぴたっと足を止めて エドワードが振り返る。
「本?
 本って まさか、あんたの書庫の?」

相変わらずの本の虫なんだな・・・と可笑しく思いながら
「ああ、そうだが。
 荷物になるかな?」
多分、そんな事をエドワードが思わないだろうとは
考えながら問い返す。

「いいや、全然!!

 でも、あんたの書庫の本って かなり貴重な本ばかりだぜ。」
本当にいいのか?という顔をして聞いてくるが、
 目は期待に満ちている。

「あぁ、構わないよ。
 持って行って、帰ってくるんだから問題はないしね。」

ロイの返事に、嬉しそうな顔をして
「じゃぁ、遠慮なく!
 実は この前 掃除したときに
 読みたい本が 山積みだったんで、
 読めてないのが一杯なんだ。」

嬉しそうに、持っていた荷物を その場に降ろすと
さっさと、書庫に向かう。
ロイも、ゆっくりと その後を追い、
扉に凭れて、エドワードが本を選んでいるのを眺める。

本を貸すことは 別に問題はない。
彼なら、大切に扱う事はわかっている。
ただ、何故 急に そんな事を思いついたんだろう?

さっき、エドワードが背中を向けたとたん、
何故だか 少々、不安になったからかも知れない。
彼は 約束を破る人間ではないが、
もしかしたら、アルフォンス君が すぐには納得を
しないかも知れない。
もし、帰ってこなかったら・・・。
帰るのが、時間がかかるような事になったら。

『保障かな・・・。』
もう1度、必ず 帰ってくるという。
何を気弱な事を考えているんだと自分にあきれるが、
そう思う自分を消せないでいる。

「じゃあ、こんだけ借りていくな。」
本を選び終わったのか、エドワードが手に持った本を
示してくる。

ざっと、選んだ本をみて
「ああ、構わないよ。
 けど、重過ぎないかい?」

エドワードが選んだ本は、ゆうに10冊はある。

「大丈夫だって、列車の往復で読むのに
 これ位だし。」
玄関に戻り、バックに 本を丁寧にしまっていく。

「それを、往復の間で?」
「ああ。」
嬉しそうに立ち上がって、カバンを持つ。
「相変わらず、すごいものだ。」
彼の集中力の凄さは相変わらず健在のようだ。
そして、選んだ本の質も さすがなものばかりだった。

扉を開けて出て行くエドワードが、
「じゃぁ、行ってくる!」と元気よく
声をかけてくる。

「あぁ、君も本に熱中しすぎて
 駅を降り過ごさないようにな。
 行っておいで。」
と笑って見送ってやる。

笑って手を振りながら、門を出て行く姿に、
「エドワード!」とロイが玄関から声を出して呼ぶ。

どうしたんだ!?と言う表情で、エドワードが
振り返る。

ロイは、何もないという風に首を横に振ると
手を振って見送ってやる。

そんなロイに、何か言いたそうにしたが、
「じゃあ!」と門を出て行った。

「・・・しばらく、独りに逆もどりか・・。」
何となく気が重い気がして、
ため息をつき、扉を閉めた。


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